適者生存の研究室

普通の大学生が現代社会での生き方を模索する研究所

【変わったバイト】カマキリを育てるバイトをした話

学科の研究室バイトについて

 

昨年三月、学科の棟内の掲示板に妙な張り紙があった。

 

「カマキリ飼育バイト募集!」

 

なんだこれは… 

 

だが、おおよその検討はついていた。

確かうちの学科には寄生虫の宿主操作のメカニズムについて研究している教員がいる。

間違いなくこれだろう… 

(というかうちの学科、寄生虫のソーティングとかアリの飼育とか変なバイト多すぎる)

 

知らない人のために言っておくと、カマキリにはカマキリに寄生するハリガネムシという生き物が存在する。このハリガネムシは成長すると宿主のカマキリを操り、川へ入水自殺させるのだ。そして川へ戻ったハリガネムシは川で交尾し産卵する。

ハリガネムシはかなりグロテスクな見た目をしているので閲覧注意)

 

僕は生物学を専攻していながら虫が大の苦手だ。小さい頃はあれだけ昆虫博士になりたいと言っていたにもかかわらず、今ではセミが自分の真上を通過するだけでビビり散らかしている。

 

しかも僕は別にお金に困っていなかった。実家生の僕にとってお金は塾講師のアルバイトだけで十分だったのである。

 

しかしお金はいくらあっても困らないというのと研究室の様子を知りたいという気持ちからバイトに申し込むことにした。

 

三月下旬、バイトの説明を受けた。

時給は900円、週にに2回2時間ほどの作業を4か月ほど。

 

一見安い、だが学科の研究室バイトには様々な利点がある。

 

まず好きな時間にできるということ。軽音部の僕にとって練習はいつ入るか分からないので、時間が固定されていないバイトはかなり有難い。上手くいけば授業の空コマなんかにできてしまう。

 

正直バイトというとバイト先に行くのがダルいみたいな部分があるがそれがないだけでかなり嬉しい。

 

二つ目の利点は時間固定なので作業が早く終われば終わるほど得をすること。実際慣れれば2時間の作業も1時間半ほどで終わるようになった。(俺は何もズルいことしてないぞ!)

 

三つめは研究室の様子を探ることができること。理系の研究室配属は三回生の終わり頃なのでそれまで誰がどんな研究をしているなんてあまり知ることができない。こういったバイトは研究内容を知ることができる良い機会かもしれない。

ついでに院生や4回生の人と知り合いになっておけば学生目線で詳しいことも教えてくれたりする。

(遊びに行けばNature読ましてもらえたりお菓子貰えたりする非常にホワイトな研究室でした笑)

 

以上の三つが研究室バイトの良いところだ。短期ではあったがかける労力以上に得たものは大きかったように思える。

 

以下バイトの詳細

 

カマキリを育てるバイト

 

研究室に行くとインキュベーターに筒状のプラスティックケースが30個ほどあり、そこに3齢虫の小カマキリが一匹ずつ入っていた。(共食い防止のためだそうです)

 

~齢虫というのは脱皮回数を表しており孵化後なら1齢虫、そこから一回脱皮すると2齢虫といった様になる。成虫になる直前だと終齢幼虫なんて言い方もする。 

 

作業はこの脱皮殻を取り除いて何齢幼虫になったかメモするところから始める。ちなみにこのカマキリ、何回脱皮すれば成虫になるとか決まっていない。

 

次にプラスティックケース一個一個霧吹きで水をあげていく。カマキリも生き物なのでもちろん水を飲む。

 

エサはキイロショウジョウバエ、生物学科生ならお馴染み"drosophila melanogaster''だ。(学名です、ハエはモデル生物なので研究によく使われます)

 

いやさすがに無理、ハエはきもいわ。

 

だが仕事なので文句も言ってられない、研究室で育てられたハエなので清潔なハエだと自分に言い聞かせた。清潔なハエってなんや…

 

エサのやり方はまず冷蔵庫で氷冷麻酔をかけたハエを先端が細くなっているプラスティックケースに移す。(イメージでいうとお好み焼き屋さんにあるソース入れてある容器)

 

そしてその先端部分からカマキリのケースにハエを10匹ほど入れる。(このカマキリのケースにはハエを入れるための小さな穴があけてあります)

 

ハエを入れるとすぐに小カマキリは捕まえに向かうのだがこれが本当に可愛い。

 

ちなみに一回ハエが大量に入った容器を落としてしまい、研究室内にハエをバラまいたことがある。

まさにハエテロ、自分は知らず知らずのうちに最近流行りのバイトテロの先駆けとなっていたのか…

 

後日訪れると研究室内に大量のコバエがホイホイが置かれていた。(マジでごめんなさい)

 

しばらくはカマキリにハエを与え続ける。体長が大きくなれば与える量を増やした。  

カマキリは餌を与え続けると無限に食べようとするので与え過ぎには十分に注意が必要だ

 

あとこいつは面倒くさいことに生き餌じゃないと食べない。生きていなくてもカマキリの目の前で動かせば食べるみたいな話は聞いたことあるが正直上手くいかなかった。

 

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2か月ほどたつと5齢虫ほどに。このころになるとカマキリは小さめのミルワームなら余裕で食べきれるようになる。

 

だがこのミルワームがマジでキモイ、断然ハエの方がマシだ。(見たい人はどうぞググってください。)

 

ミルワームは釣り餌としても使うので釣り師にとっては馴染み深いだろう。だが釣り師でもない僕にとって小さいミルワームを選別する作業は苦行でしかない。

 

全く関係ないがこのミルワーム、成長すると何になるかご存知だろうか?

 

僕はその好奇心からミルワームインキュベーター内で育てたことがある。怖い者見たさにバイトの度にインキュベータを覗いた。

 

結論から言うと成虫になるとThe 虫みたいな虫になる。もう意味わからないと思うけどマジでThe 虫。正式名称はチャイロコメノゴミムシダマシ長げえわ… 

(キモいのでこいつもエサにしました)

 

その後、このバイト史上最大のピンチが訪れる、カマキリの謎の大量死だ

 

そもそも昆虫は小卵多産戦略なので幼体の生存能力は低い。実際カマキリが脱皮に失敗して命を落とすことだってよくある話だ。

 

だが僕はお金を貰っている身、これはマズい…

 

原因は分からなかったが必死の対策により全滅することは免れた。

具体的にやったことは容器内の清掃とインキュベーターの温度を25℃に下げ、カマキリが登れる止まり木を増やした。

 

だがしかしこの時点でカマキリはもう残り10匹ほどまで減ってしまった。

 

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ミルワームを与え始めて一か月後、カマキリはようやく7齢虫になった。

 

この頃からエサをコオロギに変更、だがこいつも俺には無理だ。

ハエやミルワームに比べたら幾分かマシだがコイツはカサカサと動きやがる…

 

遠目に見たらゴキブリにさえ見えてくる…危険だ。

 

ただ餌としての食いつきは間違いなく一番良い。  

 

カマキリの食事はまるで食物連鎖の縮図を見ているようで非常に興味深かった。(かなりグロテスクですけどね)

 

そして数週間後、中国からの留学生に飼育係をバトンタッチする形でバイトが終了した。成虫まで育てることはできなかったが、昆虫の飼育なんて小学生ぶりでなんとも懐かしい経験をすることが出来た。

 

 

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世の中にはこんな変わったバイトもある、大学生の方は探してみてはいかがだろうか。もしかしたら貴重な経験が出来るかもしれない。